文月抄19−7


七年の初蝉の声初々し
               敬子
変る世の変らぬ暮し蝉しぐれ
               修一
蝉しぐれ売却済みの湯屋の跡
               久子
雨傘を日傘に代へて梅雨晴間
               順子
薄ごろも取り出す両手とこめきぬ
               日出子
夢うつつ足に跳ねたる夏蒲団
               昭子
耳鳴りか蝉の鳴く声か昼日中
               峰子   


空蝉や生きた証しの形残す
               てる子
狭庭ども森に居るかの背に時雨
               葉
時鳥に問ひかけらるる目覚めかな
               恵里子
山城の天に届くや蝉しぐれ
               浩子
昏鐘の長髪の僧濃紫陽花
               慶子
唖蝉も鳴き叫びたき今日の朝
               康子
夏草や祝令和の草の文字
               昴
ざわめきて朴の葉返す青嵐
               直美