霜月抄18−11


身に入むや木曾麻布織り伝ふ村
                 康子
そぞろ寒膝を直して座りけり
                 敬子
乾坤の瀬音風音身にぞ沁む
                 峰子
胸先に迫る黄葉や恵那の峡
                日出子
亡き母の叱咤激励身に入むる
                昴
独り酌む望郷の念身に入むる
                修一 
今はただころばぬように秋の暮
                てる子
秋晴や信号待ちのまぶしさよ
                昭子


身に沁むや戦死写真の幾千枚
                直美
漆黒の机に活けし冬薔薇
                慶子
霜の朝始発電車の硬き音
                久子
金縷梅の紅葉を活けて部屋照らす
                浩子
窓外の暮れゆく早さ秋に入る
                順子
殊更に夕暮のチャイム身に入むる
                真代
街つつむ濃霧の中の点滅器
                葉
祈りつつ待つ診察日そぞろ寒
                恵里子