長月抄17−9


朝霧の野越え山越え故郷へ
              恵里子
ダム湖より霧の棚引く山の朝
              直美
朝霧やローカル線の通過音
              修一
山霧や棚田に響くクラクション
              葉
霧深き高速道やおくれがち
              順子 
霧ごめの城址にあるや方位盤
              峰子
お互ひに杖頼る身や霧深し
              真代
遠くより聞ゆる鳥や霧の立つ
              浩子   


夾竹桃平和を祈り口遊む
              敬子
顔にのせごろ寝のいびき夏帽子
              てる子
夕霧や友の訃報の飛び込みぬ
              昴 
朝霧に濡れし草木鮮らけし
              慶子
華やげる百済の古都や蓮の花
              日出子
始発待つ岩村駅は霧の中
              康子
老いの血も透かせば赤し蚊のせせる
              久子
懐かしき思ひ次つぎ遠花火
              昭子