水無月抄17−6


雨近き蟻の行列急ぎ足
             浩子
声あらば賑やかならむ蟻の列
             てる子
蟻地獄核の恫喝道嶮し
             峰子
畑よりK蟻肩に夫帰宅
             恵里子
無住寺の回廊のした蟻地獄
             真代
母の日の娘も白髪ほつほつと
             久子
沈む日に炎となりぬ芥子の花
             直美
緑陰の山小屋飾るわら草履
             昭子

墓地の中赤き花あり母の日に
               昴
働けど蟻は過労死知らざるや
               修一
草ひけば蟻一族の大移動
               慶子
親子してよちよち歩む蟻の道
               敬子
万緑の山や馳走の茶の一会
               日出子
黙々と何処へ運ぶ蟻の道
               順子
屈みこむどこまで続く蟻の道
               康子
言ひ伝ふ明日は雨かと蟻行列
               葉