弥生抄17−3



建て替ふる菩提寺いまに木の芽立つ
                   慶子
散歩道木の芽わづかに顔を出す
                   浩子
チエンソーの音は焦るや芽吹く前
                   直美
寒明けてディサービスの母初日
                   日出子
明日ありといふし幸せの木の芽雨
                   峰子
庭の木々芽吹く力をもらひたし
                   順子
前向きに生きると決めて木の芽初む
                   和美
福豆を握りきれない齢のかず
                   敬子     
倒木の天を仰いで木の芽張る
                 修一
大欅芽吹いて天を突きにけり
                 葉
ふた筋の飛行機雲や木の芽晴
                 真代
語り合ひはまなす芽吹く潮の道
                 康子
松籟を聞きつつ茶屋の椿餅
                 昭子
赤芽樫花のようなる芽を出して
                 久子
熟睡や雨戸を揺らす春一番
                 昴
九十八の母の祝ひや春めける
                 恵里子