神無月抄17−10


姪の逝く願ひ叶はづちちろ鳴く
               てる子
秋空に一刷けの雲水彩画
                浩子
秋茜車窓の前に飛び交うて
                敬子
えんま蟋蟀仏間鳴かずに隅通る
                真代
徒歩五分ちちろ迎ふる朝の畑
                恵里子
夜っぴてを止めることなくつづれさせ
                峰子
ちちろ聞き湯浴みする身の幸せよ
                葉
芦ノ湖の霧につつまれ朱の鳥居
                昭子  
 


草原に遊ぶ木曽馬秋の風
               順子
花言葉情熱と有り彼岸花
               昴
木犀の香り漂ふ夜の庭
               日出子
ちちろ鳴く里に廃屋多くして
               康子
ちちろ聞く一心にミシン踏みし頃
               久子
九十年の尊徳像や虫囃す
               直美
耳鳴とちちろの声に悩まされ
                慶子 
ちちろ鳴く猫は窓辺に耳を立て
                修一