句集山つつじ第七集より      

山若葉少年の夢限りなし        石田蘇園

青畳に玉露は新茶金平糖       上田寿山

夕立の残してゆけり水たまり      長屋ひで

 
                それぞれの滝それぞれの景を持つ  阿部としを
  
                秘め事の一つや二つ水中花      岩田澄江

                梅雨寒や足の痺れに効く薬      小川汲人

                先ず合掌おもむろ鮎に串を打つ    小島と志

                話し度く無き日のありし捩り花      斉藤冬扇

                我家見え涙とまらぬ初帰省       佐々木 昂

                 夏木立母と語らむ手は耳に       杉本てる子

                 掌に重さ計りぬ夏 みかん       鈴木夏子

                 雲の峰土蔵造りの古き寺         鈴木雅子

                 瑠璃ながす橋の袂の花菖蒲       瀬戸峰子

                 木漏れ日や若葉織りなす登城坂     井修一

                 雲低き尼寺ひそと花菖蒲          遠山昊子 

                 でで虫や共ども母卿はなれざる     富永真代

                 田を植ゑて水の匂ひや昼の月      西尾さなへ

                 作柄は如何にと青田千の風        西尾久子

                 一斎の格言ゆかし夏つばめ        西尾浩子

                  城下町着物にひょいと夏帽子       原山康子

                  石楠花やゴツホの踊り子舞ふがごと   藤本日出子

                  睡る児に姉の扇もねむりけり       三浦弘司

                 勘三郎船乗り込みや夏芝居        山口和美

                 夕立や命あるもの蘇る           吉村直美